危ないぞ、天文知識 「太陽が回っている」4割 全国小学生調査、新指導要領が影響?  2004/09/21

 「太陽が地球のまわりを回っている」と考える小学生が四割、約三割は太陽が沈む方角を知らない−。
天文現象に対する小学生の知識や理解は危機的状況にあることが国立天文台助教授の縣(あがた)秀彦さんらの調査で分かった。
「地上から見た太陽や月、星の動きしか学ばない学習指導要領の影響が出ている」と、関係者は衝撃を受けている。

 「ゆとり教育」のため学校で教えなくなったり、自然体験が減ったりしたことが原因とみられ、縣さんは理科教育の見直しを訴えている。
結果は盛岡市で二十一日から始まる日本天文学会で報告する。

 調査は、上川管内の小学五年生三十人をはじめ、東京、長野、福井、大阪、広島の計九校の
四−六年生七百二十人を対象に選択肢から正解を選ぶ形で実施した。

 その結果、「太陽が地球のまわりを回る」天動説が正しいと間違って覚えていた小学生が42%に上った。
さらに「人工衛星と同様、地球を回る天体は?」の問いにも「火星」(27%)、「太陽」(24%)で半数以上を占め
小学生が「地球を中心とした宇宙観」を抱いている現状が浮き彫りになった。

 太陽が沈む方角を尋ねる問題では、「南」「東」「西」「分からない」の中から選択。
全体の三割近くが「西」と答えられなかったが、道内児童の正解率は73%と二位だった。
縣さんは、都市部の児童ほど正解率が低く、夕日を見る機会が少ないことが原因と分析している。
道内児童のほかの設問は、全国平均並みだったという。

 縣さんらによると、二○○二年にスタートした現在の指導要領は、小学三、四年生で太陽、月や星の動きを習った後、
中学校までは“空白期間”となる。高校でも地学の履修率は極めて低いという。

 縣さんは次の指導要領作成に向け「太陽、月、地球が球であることを示した上で、太陽系全体を見渡せる図を用いるなど、
天体の位置関係を理解させる配慮が必要」と提案している。