かたこと日記テキスト


20歳の夏の夜

アタイは、砂浜に行き

30通ほどの手紙を燃やした。






その日は、中学生の時のクラスメート

美香の誕生日。







美香と出会ったのは

13歳の春のことでつたモワモワ( ̄− ̄)。o ○












ゴールデンウィーク明けのある日

転校生がきた。

それが・・・・








美香だった。











クラスの一番後ろの席だったアタイ。

登校した時から、いつもはあるはずのない

隣に






椅子と机が一つずつ置かれていた。















そこに美香が座った。


















それから

アタイと美香の不思議な関係が始まった。











美香は特別キレイとか特別かわいいというわけでもなく

いわゆる、普通の子だった。







隣の席ということもあってよく話しをした。

授業中、休み時間と

色んな話しをしたと思う。






授業中にみせる

美香の真剣な表情の横顔が好きだった。

隣の席の特権としてよく眺めてた。




美香は気づくと

「減るから見ないで」

と照れながら笑顔で言う。






美香は足が速く、陸上部に入部した。

サッカー部のアタイと同じグランドを使う。



よく、2人で100m競走をした。

美香は足が速いがあくまで女子の中での話しだ。

何回走ってもアタイが勝ってしまう。





負ける度に

「くやしぃ〜〜〜」

とアタイを睨む。











美香は

照れ屋で負けず嫌いで素直な

普通の女の子。だった。







季節は春から夏になり

アタイ達は夏休みに入った。







アタイと美香は

毎日のように部活動に励んだ。





美香は学校の近くに住んでおり




アタイが美香の家へ迎えに行き

2人、並んで学校へ行く。




学校までは500mくらいだったと思う。

そこでも色んな話しをした。






部活のない日や午前中だけの時は

一緒に遊んだりした。






美香の部屋で話しこんだり








2人で海へ行き、一緒に泳いだり

2人でサイクリングに行ったり

2人で砂浜ではしゃぎ

落ちていく夕日を2人で黙って見ていたり



そんな日々が続いた。














夏休みも終わりに近づき

近くの神社でお祭りがあった。

その日はちょうど、美香の誕生日だった。



アタイは美香をお祭りに誘った。







当日、美香を迎えに行くと

玄関から出てきた美香は

浴衣姿だった。








「お母さんが着ていけって・・・・」

と恥ずかしそうな表情をみせる。










お祭りは混んでいた。



アタイは、はぐれないようにと

美香に左手を差し出す。




美香は短く

「うん」

と言い











自分の右手をアタイの左手に重ねる。









途中、クラスメートに出会い

ひやかされたりもした。
















でも、2人の手は繋がったままだった。











夜店がたくさんでているお祭り。

美香はかなりはしゃいでいた。





「楽しいね」

というアタイの言葉に




満面の笑みを浮かべて


「うん」


と力強く答える美香。



















とてもとても楽しい

人生最高の夏。


だった。























そうして、その夏は終わった。



















その年の秋は静かに時間が流れた。











学校祭は美香と一緒に校内を見て回った。











秋も深まり






























冬の足音が聞こえる頃・・・・









































「あたしね・・・転校するんだ・・・」

寂しげな笑顔で美香が言った。



美香の父親は転勤族。

今度は札幌に行くらしい。









2週間後・・・・














美香の登校最後の日の帰り





アタイは部活をさぼり

美香と一緒に帰った。









話したいことはいっぱいあった


はずなのに





























お互い、無言で歩いた・・・・・























美香の家の前に着くと






























美香は黙って右手を差しだしてきた。





















さよならの握手だ。






















アタイは美香の手を握る。

















美香は・・・・














強く強く強く・・・・




































その手を握り返してきた。













長い時間、握っていたような気がする。



この手を永遠に離したくない。

このまま、時が止まってくれれば・・・・



今でもその時の感情は忘れてはいない。











そうして










手が離れた。





























「じゃあね」

といつもと変わらない口調で言い


美香は家へと消えていった・・・・








次の日

学校へ行っても美香と会えなかった。







放課後、美香の家へ行くと







表札ははずされていた。













生まれて初めて

「寂しい」という感情を知った秋だった。
































1ヶ月後・・・・・

































アタイ宛に手紙が届いた。



















美香からだ。












アタイは返事を書く。








それから手紙のやりとりは続いた。















函館に帰りたい。

なかりんに会いたい。


そんなことが書かれていた。






高校生になったら遊びにいくよ〜

社会人になったら函館で働いて函館に住む!!


と何回も手紙に綴られていた・・・・





転校を繰り返し、色々な土地へ行ったことのある美香。

そんな美香にとって

函館は特別な街になったようだ。












そんな関係が2年近く続いた。


















しかし・・・・


































中学3年の秋から

美香からの手紙は届かなくなった。




アタイは

受験で忙しいのかな?

と思い、特に気にもとめてなかった。







それでもアタイから

手紙は出し続けた。











そして12月のある日

手紙が届いた。













それは






































美香からではなく


美香の母親からだった。















































夏の終わりに

























































美香が交通事故で亡くなった。


という内容のものだった。











美香の母親は

アタイがショックを受けないよう

受験が終わってから話そうと思ってたらしいが

やはり、話さなければならない

と思い手紙を送った。とのことだった。






美香は母親によく

アタイに会いたい

というようなことを言っていたらしい。





アタイが大人になったら美香に線香をあげにきてほしい。

というような

ことが書かれてあった。






















その手紙を読み終え

押入れから

これまで美香から届いた手紙を出し


全てに目を通した。




































途中から視界がぼやけて

読めなくなった・・・・・・・



















20歳の夏

アタイは美香の母親との約束を果たした。


















アタイは、今でも思う。































もし、1つだけ

どんな願い事もかなうなら・・・・












































もう1度・・・・






































































美香に逢いたい。



















そして、アタイは

今も函館に住んでいる。
































そんなアタイの初恋のお話しでつ(ペコリ)